勤務した病院で、ちょうど私が入職したときは大規模修繕を
行う前で計画中だった。
私は、建築系だったので、参加させてもらった。
病院の一番古い棟はもう築40年。アスベスト除去も行った。
私は仕上げ決め担当。いわゆるお化粧部分というか。
今まで3階にあった霊安室を1階に持ってくることになった。
今までの霊安室は、そっけないかんじだった。
病院の霊安室は今でも寂しい感じのところが多いらしい。
最後のおもてなし空間が霊安室ではないだろうか?と私は思った。
亡くなった方の魂は身体から抜けて近くにいるかもしれない。
一部始終を見ているとしたら、家族が自分の遺体のそばで悲しんでいる、その空間がせめて、家族との最後の時を過ごす、憩いのスペースであってほしい。
予算がない中でも、私は壁をオレンジピンク系のダマスク柄の壁紙にして、モカっぽいアクセントを入れた。照明はブラケットにして、それも花模様にした。
遺族の座るソファにはフリンジのついたクッションを置き、少しだけ華やぎを添えてみた。
ご遺体を乗せるワゴンもデザインしてみた。
テーマは「一度はここで死んでみたい」霊安室。
華やぎのある、気品のある空間を目指した。
素敵な空間になった、と自分では思っている。
工事途中で、もしかして、自分の父親もここで亡くなったりして……なんていう想いがよぎった。
果たして、その想いは現実になった。